萬ムービーフェスも8月12日(水)で終了を迎え、数年ぶりに舞台に立たず過ごす夏が、より平凡なものになってしまったような気がしている私たちです。本来であれば、今頃「夏の短編集」の疲れと余韻に浸っている真っただ中。しかし、皆様もご存知のように新型コロナウイルスの影響でイベントそのものが中止となり、予定されていた出演も幻となってしまいました。
「夏の短編集」は萬劇場さんが主催する演劇フェスで、通常の公演とは異なり主体的な収益を計算できるイベントではありません。しかし、チケットの販売枚数に比例した黒字還元は存在していました。私たちは販売目標枚数を120枚に設定し、それだけの販売が可能な出演者の内定まで話が進んでいました。ちなみに、この120という数字が多いのか少ないのかと申しますと、夏の短編集は3団体が1ステージの対バン形式上演を行うスタイルで、1回のキャパシティが約120名。つまり3団体で分割すると1団体40名。これを3ステージ行うので40×3で120という、実に平均的な数値です。しかし、裏返せば、イベントにエントリーした以上、果たすべき最低限のノルマであると認識して準備していました。もし120枚のチケットを販売していたら、どれだけの収入に還元されていたのかという話は…関係者だけの秘密ということにしておきますが、見込まれていた収入がゼロになったことは事実です。
さて、この見込んでいた収入は、もちろん「夏の短編集」の作品制作経費に充てるものであると同時に、11月に控える第24回公演の実施経費の一部になる予定でもありました。前者は舞台そのものがなくなり、代替で制作した映像作品では過去の衣装や小道具、所持していたビデオカメラや編集ソフトなどだけを使用したため、ほとんど経費の支出がありませんでしたので大きな影響はありませんでした。問題は後者、第24回公演の方です。
根本的な話として、11月下旬に第24回公演を実施するのかどうかという問題があります。結論を申し上げますと「実施する」予定で準備を進めています。もちろん、新型コロナウイルスによって社会情勢がどのように変化するのかは未知数です。もちろん、何がなんでも強硬的に公演を行うというつもりではありません。状況を注視して中止の決断に至る可能性もあります。しかし、中止にするのは三日前でも可能である一方、実施するための準備は今からやらなければ間に合わないのが実情です。そこで、劇団員とも何時間もかけて話し合いを行い、現時点で考えられる策を講じ、自分たちがやるべきことを行うための準備をしておくことにしました。
具体的には、お客様、そして出演者に等しく感染リスクの軽減を提供するというコンセプトのもと、公演の形態を劇場での有観客公演だけではなく、インターネットでの生配信、さらに少々の編集を加えた録画配信という3WAYにすることを予定しております。もちろんお客様のお好きな観劇方法でご覧いただける想定です。
お客様のご来場は少人数に限定し、座席は全席指定席。チケットは事前ご予約のみの取り扱い(当日券なし)。受付でのお金のやり取り、ご予約照会を極力削減します。
上演する演目も10分~15分の短編(出演者も各2~3名程度)を3本ほど上演。役者の楽屋使用も完全入れ替え制でローテーションを組みます。演目や出演者に関しては全く決まっていません。このような社会情勢の中では公演に関わるという判断を下すことも大変なことです。上演内容と並行して、こちらとしても慎重に話を進める必要があります。
恒例のグッズ販売は、従来のように劇団員の手売り販売は行わず、見本写真からご用命いただき、ビニールに個装された(消毒済みの)商品を販売する方法と、通信販売でのご提供を予定しています。
舞台と客席の間のビニールシート設置、役者のマスク、客席のパーテーションなどの細かい形式は現時点では何も決めていません。そのような細かい対応はもう少し後から決めれば間に合うからです。
…と、このような概要での興行となりそうです。当然ながら、チケット収入・グッズ販売収入は大幅な減収となることが見込まれます。当初組まれていた第24回公演の収支予算案では、これらの収入が55万円の見積もりでした。しかし、単純に1回のステージあたりの集客人数を減少させることを反映させると、この数字は8~10万円程度に落ち込む可能性も出ています。夏の短編集で得られるはずだった経費補填もありません。ここにインターネット配信(有料)が上乗せされるかもしれませんが、こちらは初の試みでもあり未知数です。小規模に行うのだから今回は仕方ないと精神的には折り合いが付くかもしれません。しかしどのような内容であれ、劇場を借りる上では使用料がかかります。問題はこの使用料を賄い切れるかどうかです。こればかりは我慢すれば済む問題ではありません。何とかしなければいけません。何とかならないようならば、新型コロナウイルスの間接的な影響で公演を断念しなければいけなくなります。
こうして振り返り、次の舞台を展望すると、公演の実現は極めて厳しい状況であることを実感します。しかし、様々な社会的立場の人間がひとつになる舞台を存続させるため、そんな劇団の理念を途絶えさせないため、そして舞台上での自己実現を願う劇団員のために、何とかして第24回公演を実現させようと、劇団員一同で画策しております。詳細の発表は、そんな我々の準備が整った頃合いに行います。それまで今しばらくお待ちください。今はただ、「11月に何かが見られる!」とだけ申しておきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。