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9月20日の「Stationファンタジー」です。

Posted by theatreminori on 21.2018 稽古レポート
アースキャラバン2018東京も終了し、ついに公演まで1カ月となりました。午前中の制作部、午後の稽古共に、より一層本腰を入れて取り組まなければいけない雰囲気になってきました。この日は早くも来年度の活動予定についても何点か検討されました。まだ確定していないスケジュールばかりですが、どんな方向性で進んでいくのか、もしこうなったらどうするのかを考えながら、全体で意識の共有を図りました。

制作部では第20回公演で販売予定のグッズデザインが確定し、いよいよ製造作業に入りました。これまで何度もデザイン案が出ては、決め手に欠けていたため採用されずにいましたが、やっとデザインが決まったことで、参加していた団員は一安心。あとはとにかくそのデザインを形にしていくだけです。

午後は出席者の顔ぶれを考慮して新作「Station」を徹底的に稽古しました。先週の稽古で一通りすべてのシーンを実施していたので、この日はまず最初のシーンから2周目の稽古に入っています。先週までは何となくの方向性に対してのアドバイスが主流でしたが、演出からの指示もより深い解釈を求められるようなものになってきました。

冒頭のシーンでは演技の中でキャラクターをどのようなプロセスで表出させていくか、そこに物語の流れ全体でどんな意味が含まれているのか、いわゆる演出的意図を意識した表現への要求が目立ちました。後々、別のキャラクター表現に変化するにしても、その変化をより深みのあるものにするために何をすればいいのかという説明が、演出から丁寧に行われていました。

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中盤のシーンでは、脚本からどのようにして役の人物の本質を読み取るのか、いわゆる「役作り」についてのレクチャーを授かる役者もいました。ここ最近、この役者は自身の特徴をそのままぶつけることで役にマッチするという構造の中で演じていました。つまり、脚本と演出の裁量によって生かされていた要素が大きかった役者です。しかし、今回はそんなテンプレ的な演技ではなく、本当の意味でのキャラクター構築を要求されるようになりました。通常の役作りという観点で至極当たり前で、何も特筆すべきことではないのでしょうが、本人にとっては未知の領域ともいえる世界への挑戦です。かなりの苦労が伴うものかと思われましたが、本人は「逆にすごく楽しいです」と、その負荷を楽しんでいました。演じることの楽しさは、苦悩の果てにあることを理解しているからこそ出てくる言葉ではないでしょうか。

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また、自分が演じる役の心境を紐解いていくうちに、感情移入のレベルが向上し、我が事のように涙してしまう役者も出現しました。このような反応が出るということは、その人物に高品質でシンクロできる可能性があるということです。一人で考えているとそこまで踏み込めないことも、演出と共に稽古の状況を踏まえて振り返っていくと、自然とキャラクターに歩み寄ることができます。セリフや動作を反復して演じるだけが稽古ではありません。時にはこういったフィードバックを経て、役の人物と自分をいかに重ねていくかを考えることも必要なのです。このシンクロがなければ、他者の人生を疑似的に演じ切ることはできません。そのためには感覚や記憶を総動員しなければいけませんので、役者の心身の疲弊は相当なものです。それでも、自分と人物の感覚が重なった時の不思議な感触は、そんな疲れを忘れさせるほどの不思議なものでもあります。そして、どんなにフィットしたような演技が構築されても、それが完ぺきではないからこそ、いつまで経ってもやめられないのが役者なのではないでしょうか。それほどまでに他者に変身することは困難なことでもあり、少しでもそれができれば、この上ない高揚感や充実感(その裏側に潜む妥協)を得ることができるものなのです。

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私たちの公演をご覧になった方の中には、障がい者と共に活動している団体なので、自分が苦労せず、無理のない範囲でそれなりに目立てる役を演じられると期待(勘違い)していらっしゃる方も多いことかと思われます。実際にそのようなニュアンスを期待して見学・体験にいらっしゃる方も少なくはありません。しかし、輝きを放っている作品を創り上げるには、そこに関わる人間誰もが平等に自分の限界に挑むような、ギリギリのチャレンジが必要なのです。もちろん、そのチャレンジレベルは、個々の体力や特徴によってその強度が異なります。問題はそれを「やらされている」「自分には無理だ」「できなくて当然だ」と受け止めてしまうのか「楽しくなってきた」「もっと自分の力を伸ばしたい」「ここまでやってもまだ足りない」と受け入れるのかの違いにあります。

障がいがあることを理由に守られた生活に慣れてしまっていると、前者の「諦め」を選択してしまいがちです。てあとるみのりでは、そういった「障がい」という概念を、芝居作りに平等に関わり合うことでネガティブな「言い訳」ではなく、ポジティブな「個性」に変換しています。だからこそ、これまでに10年間、20回以上の舞台公演を重ねることができたのです。本日の稽古では、そんな劇団のスピリットの一端に触れることができたような気がします。舞台創りに関わる以上、障がい者も健常者も関係ありません。肝心なのは「できるか、できないか」ではなく「やるか、やらないか」なのです。

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そんな劇団員の思いのすべてが折り重なっている第20回公演「Stationファンタジー」は10月18日(木)から21日(日)に北池袋新生館シアターで上演されます。チケットのご予約、詳しい情報などは、公演情報特設ページからご確認下さい!
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