第18回公演「ボーダーライン」8月4日(金)~6日(日) 北池袋 新生館シアターにて
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6月最終週の活動となったこの日、いよいよ「あと1カ月で公演だ」という意識が劇団員の間にも高まってきました。午前中の制作部、午後の稽古とも真剣な雰囲気で展開した活動を紹介しましょう。
制作部では主に衣装作りとお客様へのダイレクトメール発送準備作業を行っています。ただ郵便を送るのではなく、、メッセージを添えて発送するので、そのメッセージを作る作業に取り組みました。「この表現でいいんだっけ?」「暑熱…ってどう読むの?」「最後に敬具って書くの忘れた」などなど、普段使いなれていない手紙でのあいさつ文の作成に大苦戦。お客様によっては「前回おいでくださったのっていつだっけ?」「あれ?TRIGGERの時っておいでになっていなかったでしたっけ?」「じゃあ、前回は…とは書けないね」と、あいさつ文に、その方に見合った内容を追加するため、公演当日の受付リストを使った事実確認を行う必要もありました。

衣装作りは先週までの作業を継続して行っています。同じものを複数作らなければいけない衣装もあり、ここ数週間はひたすら三つ編みをしている団員もいます。そのパーツを使った衣装が少しずつ完成形に近付いてくると、折れそうになっていた心も立ち直りを見せます。作業に携わった団員はお互いに「すごいなぁ。こんなに作ったんだ」と振り返っていました。先週疲労困憊だった大女優は、この日も「眠れなくて疲れた」と口にしていましたが、周囲からの励ましもあって、時間までしっかりと自分の作業に取り組んでいました。
午後の稽古は、先週実施した通し稽古で浮かび上がった問題点、演出から見ての改善が必要な点を中心とした、大規模なテコ入れが実施されました。身体の向き、動き方、立ち位置など、全体のバランスを取りながら、物語の中での必然性、演出の意図を強調するための修正です。物語全体の前半部分とダンスシーンに対して、演出から役者たちに事細かに指示が出されていました。あとは役者たちがそのイメージを共有して、その上に己の演技をしっかりと載せることができれば、より舞台が面白くなります。演出としてできることはここまでなので、公演までに役者たちがしっかりと役を作り、物語の中でそれを生かす感覚を浸透させられるかに、作品のすべてがかかってきます。当然ながら役者たちの集中と緊張は最高潮に高まっています。

この日具体的に申し送られたことは「どうすればいいか」ではなく「なぜそうするのか」をしっかり考えてこようということでした。演出からひとつの動作や立ち方などが指示されることはよくあることです。それをそのまま「こうやって動かなければいけない」「ここで大きな声を出す」「このタイミングまでに移動する」という段取りとして忠実に実行するだけでは演技になりません。その指示に対して「この人物がなぜそのタイミングでその動きをするのか?」という根拠を追い求めていかなければいけません。それがしっかりと構築されていくことで、舞台上の世界が現実的に生き生きとしたものになっていきます。セリフを形だけで覚えずとも、流れの中で自分の主張すべきこと、動くべきことが自然と浮かんでくるようになります。集団で演じる際には、このイメージや流れの共有がなければ、バラバラな世界のままになってしまいます。一人だけ頑張ってもダメ、一人が手を抜いてもダメというのが舞台の世界なのです。

ダンス練習では、なかなか一部の振り付けをマスターできない役者へ、他の役者が協力して「向かい合って練習してみましょう」「ここで止めるといいですよ」と、振り付け練習を実施していました。何回か練習していると「そうそう!それでOKです!」と、これまでできなかった振り付けができるようになりました。支え合う気持ちや自主的な努力が感じられて素晴らしい出来事にも見えますが、この稽古の合間に少し練習しただけでできるようになった振り付けが、今まで何週間待ってもできなかったわけです。その事実の裏側を察なお、団員たちは「自主練やっているので、一緒に頑張りましょう」「私も大変ですけれど、少しでもいいものを作ろうと思っているので」「がんばってるのはみんな一緒なんですから、一緒に頑張りましょう」「もう一歩先へ進みましょう」などと寛大な言葉をかけていました。この懐の深さが、てあとるみのりの団員たちのいいところでもあります。その環境に甘えるのではなく、感謝をしながら、一人ではできないチャレンジを一緒に積み重ねていく。その先に仕上がった舞台があるのです。ぜひ、お客様にはそんな我々の思いの結実をご覧いただきたいです!