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7月28日の「宴もたけなわ」です。

Posted by theatreminori on 29.2016 稽古レポート
第16回公演「宴もたけなわ」
8月5日から7日まで 北池袋 新生館シアターにて上演
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今週も急きょ、昼間から夜まで続く特別稽古体制で臨むことになりました。本番まで1週間となったこともあり、全員が「やれることは最後までやりたい」という心をひとつにしたためです。制作部も稽古も、いよいよ大詰め。まさに最後の追い込みです。

午前中の制作部ではわずかに残っていたグッズの仕上げを行っています。既にFacebookの公式記事でグッズのラインナップが紹介されている通り、ほとんどの商品は完成しています。あとは数量を追加した商品を仕上げ、販売をスムーズに行うような仕分けをするだけでした。何とかお客様にご購入いただけるように、手作業にも心を込めて実施しています。同時進行で衣装の調整も行いました。実際に試着をして演じる中で生じた不具合を改善するための調整です。普段着ではない着物をアレンジした衣装の数々は、演じる側も管理する側も不慣れな面があり、苦労が絶えません。しかし、それだけに見た目も魅力的な衣装になっているはずです。そうするために制作部は頑張っているのです。

さて、午後からの稽古では…なんと、ここに来て初めて出演者全員が一堂に会しました。大丈夫か?と思われるかもしれませんが、様々な年齢層、社会的立場の人々の集まりであるてあとるみのりでは珍しいことではありません。日頃からその環境でも個々で稽古をすることで、本番直前(時には劇場で)全体が融合できるのです。常に全員揃って短期集中で仕上げる団体にとっては驚くことかもしれませんが、こちらはそうしたくてもできないので、このようなスタイルで工夫をしながら作品を仕上げているのです。そんなこの日の稽古も夜22時までの特別稽古。課題が多いシーンを徹底的に繰り返して稽古しました。

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さすがに最終稽古ということで、稽古前には総監督から、この稽古を含めて残り1週間を死に物狂いで作品に向き合え、まだまだ何とかなると胡坐をかいているぞと檄が飛びました。「はい!」と全員が声をそろえ、気合の入った表情で答えたように、これまでにない集中力と、豊かなイマジネーションで稽古が進みました。特に大女優のイマジネーションが抜群でした。次から次に、これまでになかったアドリブを創出し「これ今考えたの、やっていいでしょ?」「こういうふうにやっていい?」と、次々に自分から演出に確認していました。もちろん、ほとんどのアドリブは物語の中で理にかなったものでした。これだけ妥当なアドリブが大量生産されるということは、それだけ目の前の出来事、芝居の中に心身が置かれていたことの表れです。心ここにあらずの状態であっては、そんな発想は生まれません(これまではそんな感じのことの方が多かった気もしますが…)。もっとも、我らが大女優の場合は、このコンディションが常に発揮される保証がないので、公演はどうなるかわかりません。それでもこの日は「今日は8時まで頑張るよ」「8時少しぐらいなら過ぎてもいいですよ」と、いつもは16時にすぐ帰る姿と打って変わって、ひたむきに稽古に取り組んでいました(朝の制作部から参加していましたし)。この姿勢が公演本番でも報われることを祈るばかりです。

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稽古の終盤、演出兼総監督からメイン役者それぞれに、残り時間で改善すべきところが伝えられました。中にはこれまで種明かしをしてこなかった課題の真相(演出が何を求めていたか)も含まれていました。演技というものは演じている人間の感情だけがあふれだし、それっぽく見えているだけでは成立しないものなのだと、このディスカッションを通して再確認できました。「あふれだす感情の逆側にはそれを抑えようとする感情がある」「その葛藤を表現してこそ、本当の人間らしさが見えてくる」。哲学じみた理論ではありましたが、表現方法に悩んでいた役者にとってはまさに目から鱗な教えになりました。また、全体を観客の視点でイメージしながら脚本を読んでみる、相手がいい演技をすれば自分の演技も良くなるしその逆もまたしかり、公演ごとに人物が物語の中で得た経験値を捨ててセーブポイントに戻る…などのアドバイスも授けられました。

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いずれにせよ、不安があるのならばそれを極力削減し、自信を持って、余裕を持ってその場に立てるようにすることが第一です。奇しくも今回初舞台となる新人団員が、短期間の稽古で驚くほどの進化を遂げています。自信のなさに対する恐怖が、レギュラー団員よりもはるかに強いからこそ、可能な限りすべての時間を鍛錬に注いでいるからではないでしょうか。ちょっと舞台に慣れてきてしまった団員たちは、その「本当の努力」を怠ってしまう可能性があります。「何とかなる」「ここまで出来ていればいいや」「疲れたから仕方ない」といった言い訳がどうしても頭をよぎり、世渡り上手なごまかし舞台を目指してしまう恐れがあります。もっともっとどん欲に「さらによくするには?」という努力を、言われて行うのではなく、自分から演出側に発信しなければいけないはずです。残念ながら、それができていたのは新人団員だけでした。この事実を突きつけられたレギュラー団員のプライドが、この1週間でどれだけ爆発するのか?その答えが8月5日からの「宴もたけなわ」を彩るはずです。

ここに我々の存在意義をかけた舞台が完成しようとしています。「宴もたけなわ」間もなく開宴です!