ついに4月最後の活動日です。この日でグッズ案も確定し、製造に移っていく日程です。また、造形が必要な衣装も「案」ではなく実際に使用する前提で製造に入っています。

制作部ではそんなグッズ作りと衣装作りが並行して行われていました。序盤は「しまった!」「はみ出してる!」と作り方を間違えることもありましたが、時間が経過するにつれて大きなミスもなく進行しています。衣装の方は実際の役者に何度も合わせてもらい、サイズと機能の妥当性を検証しながら作業しています。それぞれが真剣に自分の担当する作業を実施していきました。時には「ここも直さなくちゃダメ?」「やるの大変だよ」と妥協したくなる団員もいましたが「物を買ってもらうには、しっかりと作らないと売れない、大変なことなんですよ」と諭されると、ある程度納得した上で作業を継続していました。

真剣な静寂が時間を支配していた午前の制作部とは打って変わって、午後の稽古はウォーミングアップから元気良くにぎやかなパフォーマンスが目立ちました。先週の躓きを挽回しようと、役者たちがお互いを奮い立たせ合っているような空気があふれていました。

この日は稽古中にも演出からそれぞれの役者に演じるときのアドバイスがなされたのに加え、次週が連休でお休みであることを理由に、演出からそれぞれに克服してくるべき課題が文書で手渡されています。これまで気にしていたこと、言われてきたことを改めて裏付けをもって指摘された役者や、伸ばすべきポイントを整理して伝えられた役者など、それぞれに次回の稽古までに達成してくる、あるいはレベルアップをしてくるべきことが形として手渡されたことで、役者たちは「もっと質を高めます」「まだまだ甘かったです」「この内面を作ってくるのは難しいですが、何とか考えます」と、モチベーションを新たにしていました。連休の翌週稽古が楽しみです。

ひとつのシーンを繰り返して稽古できる時間は、確実に残り少なくなってきています。お互いに「今度練習しておきましょう」「空き時間に合わせてみていいですか?」などと声を掛け合いながら、一度整理された演出の内容や求められている演技の表現を形にしていくための努力が散見されるようになりました。また、日常生活の中でも、自分が演じる役の生き様や価値観をつかむための努力を始める役者もいます。少しずつですが、努力を着実に積み重ねることで芝居の品質は高まります。逆に足踏みをしていれば、進んだつもりになったままでいれば、品質は高まることなく、見る者に何も伝えられなくなります。この団体には様々な「事情」を抱えて演劇に向き合っている団員が多くいます。しかし、お客様が見たいのはそんな事情や影の苦労ではなく、その成果そのものなのですから、どんな事情や苦悩があっても、向き合っていくしかないのです。