先週が年度末の最終活動。そして今週は4月になって最初の活動。もう7日も経過してしまったことと、すでに第16回公演「宴もたけなわ」に向けて活動が継続的に進行していることから、先週ほどの感慨はなかったですが、それでも節目の月初め。団員たちもここからさらに加速してそれぞれの活動を仕上げていこうと、気合いを入れ直しているようでした。
午前中の制作部では、まずは衣装(案)の試作、試着を行っています。昨日まで時間の合間に準備していたものに、この日の制作部の中で一気に形にしたものが加わって、かなり具体的な形が見えてきました。特に造形が必要な役の衣装には、アイディア段階から多くの人の手が加わっています。この日も「ここを結束バンドで止めてください」「もっと大きめに丸めて入れてください」など、発案者からの指示が細かく投げかけられていました。何人かの力を合わせて迅速に形にした試作衣装を身に付け、どこまでイメージ通り、理想に近い雰囲気が出せているかを確かめました。

制作部の後半はグッズに関する話し合いです。朝の段階では「調子が悪いから午後から行く~」と口にしていた団員も、やはり自分の携わったグッズが形になって販売されることに高い動機付けを感じるようで、1時間ほど遅れたものの話し合いに合流し、試作された現物を手にしながら具体的な検討が行われました。また、候補に残っていた案の中で、実際に生産に踏み切るもの、踏み切らないものの審議も行われました。ここで太鼓判を押された案が次週から生産開始されます。

午後の稽古では冒頭に衣装案の試着が行われました。まだ全員の衣装案の現物が揃っているわけではないのですが、できる人だけでも先行して行おうということで実施しました。実際に着てみると、畳んだ状態で思い描いていたイメージとのずれが生じる場合があります。また、サイズが大きすぎたり小さすぎるといった、デザインや印象以前の課題が浮き彫りになる場合もあります。今回の試着を貴重なデータとして反映させ、衣装の再考に用います。もちろん、まだこの段階では写真を公開できませんので、ご了承ください。
衣装合わせの後は申し送り、ウォーミングアップを挟んで稽古に入りました。今回から早くも脚本を手放して、仮の小道具を入れての稽古です。先週の段階で「セリフの丸暗記はするな」という演出からの指示があったため、役者たちは一種の矛盾に頭を悩ませながら準備してきたようです。その答えは今日の稽古の中で、演出から「改めて」示されました。そう、改めて、なのです。
実はこれまでも何度も伝えられてきた、芝居の基本的な面白さこそが、今回のチャレンジを成功させるために重要な要素だったのです。それは、「目の前で起こった出来事に素直に目と心を向ける」ことと「それに対して自分が自分の(物語の中での)役割に則った言動を取る」ことです。セリフを暗記しようとしない状態で脚本を手放すと、演技は当然ながら物語の流れを重んじたものになります。そしてその流れの中で自分がどんな振る舞いをするのか、何を誰に伝えるのかをイメージしながら演じることになります。

このような感覚とイメージだけで演じて、全体が綺麗にまとまるはずがありません。そのほころび、違和感、不整合性…脚本と比較した場合であれば間違いと評される部分を振り返ることに意味があるのです。なぜそこで流れが途切れたのか、逸脱した行動に至ったのか、相手の言葉が出なくなったのか、自分が何をするのかわからなくなったのか…。逆にスムーズにできた部分はなぜその流れが生み出されていたのか、誰のどんな言動をきっかけにして心が動いたのか…。これらを脚本と照らし合わせながら検証することで、役を作っていく上で大事にしなければいけない、人物の動機付けの部分を把握できるようになります。何をどう感じ、どんな反応をするのか?この基本的なキャラクターの根底がつかめるようになります。物語の中で生きる、極めて自然な、リアルな表現に近付くことができるのです。だからこそ、セリフを覚えてきて脚本を手放すという行為に芝居を創る上でのメリットはないと考え、今回のような取り組みを実施しているのです。

本日の稽古では、そんな基本中の基本にして、永遠とも言える課題を少しでもモノにするため、同じシーンを何度も何度も演じました。一つひとつの反応、声掛けなど、演出からいくつかの指示が与えられました。この指示を形式的なものにするのではなく、妥当なものにするためにも、役者はそれぞれの人物が何をどう考えて行動しているのかを深く読み取って、人物像として構築していかなければいけません。まだまだ取り組まなければいけないことは山積みです!