ついに今年度も最終日。そんな3月31日がてあとるみのりの活動日であることに、何やら身の引き締まる思いでした。それと同時に、「もう明日から4月なのか」「次の稽古は4月7日なのか」といった緊張感も得られました。8月の公演はまだまだ先かと思いきや、着実に時間は進み、その時が迫っているのを実感できます。
午前中の制作部では衣装準備のために役者の肉体のサイズを測定しました。実寸読み上げはいろいろと弊害がありそうなので、ひもで測ってその長さをそのまま布にあてがう形で測定しました。布というのはなかなか高価なものなので、細長い素材が必要な場合は、なるべく量販店のワゴンセールで買い集めるようにしています。格安の布は端切れのような素材がほとんどで、満足な長さが得られないものも珍しくはありません。「2回巻けますか?」「足りなかったらごめんなさい!」ということで、役者の体…特にウエストの測定が重要になってくるのです。

衣装の検討に続いて、グッズ案の品質改善についての話し合いを行いました。担当者が試作してきた素材を手にして「このバランスの方がいいと思います」「この部分はこれがベストですね」「これだけだとさびしいので文字や装飾を追加してみようと思います」などなど、複数の試作品を基に、具体的な提案が交わされました。素材の担当者は早速「じゃあ今やってみる」と、作りなおし作業を開始していました。どうやら今回もジョッピーをモチーフにしたグッズが生産されそうな気配です。

午後の稽古が始まる直前。昼休みの終わりには役者の数名が踊りの振り付けを確認しながら、何度も繰り返して練習していました。このところ木曜日以外にも空き時間には数名の役者が自主的に練習をしていましたので、振り付けの定着が早いようです。それでも「自然に体が動くまで染み込ませたい」「カウントに捕らわれず音楽を感じながら動けるようにしたい」と、向上心を持って練習しています。今までにない努力の姿勢が感じられます。
その後の稽古では、自主練習の成果が出ている役者と、あまり自主練習をしていなかった役者の差が顕著に表れていました。今の段階ではそのことに大きな問題はありませんが、当の本人がその現状に対して「後ろで踊ったらダメなのね?」「覚えないと!」と、自分の課題を認識できたことが大きな収穫だったように感じます。

演技の稽古では状況に中に流れる空気をいかに引き出すかが難しかったようです。目の前に対峙する対象がいることで、そちらのことばかりにキャラクターの意識を注ぎすぎて、本来重要視すべき動機付けがおろそかになってしまうことがあります。そういったシーンの「流れ」に乗れないままの演技が点在することで、物語全体の雰囲気が表現できなくなってしまいます。この点はどの役者にもある課題ですので、大きなところから一つひとつ、演出とのディスカッションを重ねながら修正していきます。個人の演技だけではない、物語全体に流れる空気や速度のイメージ共有が成されなければ、一体感のある面白い舞台にはなりません。


4月から主要キャストは一度脚本を手放しての立ち稽古に入ることになっています。思ったよりも動きが多い芝居ですので、「手がふさがっているとできないですね」というある役者からの率直ないコメントもあったように、もっと自由に演じられるような準備が必要になってきます。もちろん、そのためにセリフを丸暗記してくるということはあってはならないことです。演出からは、その人物の目的、他者への感情、これまでの演出で言われたことがなぜそうなのかの裏づけなどを心に染み込ませてくるようにとの宿題が出されただけです。セリフを間違える、正確に言うということは気にしないでいい、純粋に人物を演じてほしい、というのが、現段階での大きな課題のようです。