18-α本日の制作部から午後の稽古まで、ホワイトボードに大きく記された数式です。
これは「Mission」公演までの残された稽古日数を示しています。よく見かける表記としては「+α」でしょうが、なぜか「-α」です。理由は行事や事業所(ハートランドみのり)の都合によって、十分に稽古が開催できない木曜日があることが予想されるからです。どちらにせよ、この数値が劇的に増えることはあり得ません。本番までまだ4か月ある事に油断していると、あっという間です。考え方を変えれば、本番まであと18日しかないのです。そんな状況でのんびり力を抜いて稽古や準備に取り組めるはずはありません。本日はこんな意識の改革と意志の共有を徹底しました。

緊張感あふれる稽古では、人物の内面、心情、言動の動機に至る細部まで掘り下げられた要求が演出から次々と出されています。感情に起因しない言動に対しては「学芸会レベル」「そろそろまともな演劇をしてください」「そんなものを見に来るお客などいない」という容赦ない言葉が投げかけられます。脚本を渡されて翌週の稽古ですが、スタートが肝心。ここで誤った認識のまま稽古を重ねても何の意味もないということです。これから重ねる努力が無駄なものにならないためにも、入口が肝心なのです。



演出からのフィードバックを受けていくうちに、それまで脚本を読んでいる雰囲気全開だった役者の演技が、少しずつ解放的なものになり、動作や表情に生命を感じられるようになりました。「舞台上で、物語の中で生きろ」という長年の命題。その答えに少しだけ近付けたような稽古でした。次第に思い切って脚本を手放す役者も現れました。即興芝居練習で体現できていた、当たり前のやり取りが臨場感と現実感を彩り、時に滑稽さを増して畳み掛けるように展開され始めました。この粗削りだが生きている感じが、面白い舞台に不可欠な要素。どこまでこの鮮度を保ちつつ、洗練できるかが勝負です。
稽古の最後には、裏方団員も役者の稽古をバックアップして、本当の意味でみんなでひとつの舞台を創ろうという意志の統一が図られました。舞台作りに慣れてくると役者と裏方の役割の違いから、それぞれの取り組みが別物のような、別にその場にいなくても影響がないだろうというような、極めて誤った価値観を双方が抱いてしまうものです。それをそのまま放置していたのでは、チームとして一丸にはなれません。時に厳しくもアツい言葉を交わして、互いの取り組みを評する、いや、ただ見ているだけでも取り組む姿勢が変化します。そういう支え方もあるのです。むしろ、そうやって支え合わなければ成立しないのが真に凝集性の高い集団です。互いが貪欲に、己を高めるために他者を認め、押し上げ、引き上げていくモチベーションの連鎖。これも演技と同じく、常に新鮮な刺激でなければいけないものです。

そういったイベントを経ての円陣はいつもよりドラマチックです。日常のどこにでもドラマはひそみ、モノの見方、感じ方ひとつでドラマが生まれるのです。この真剣な気持ちの塊が、舞台上からお客様のもとへ届けられるよう、今日を終えて17-α日の稽古が、毎回勝負です!