さて、公演報告第2弾は、舞台裏を中心にお届けします。
まず今回お届けするのは、普段のハートランドみのりを劇場仕様にするまで、つまり「仕込み」の様子です。人数が多ければ早いというわけではなく、迅速かつ的確な仕切りが必要です。このあたりが舞台監督の仕事です。よく舞台監督という言葉を演出のような立場の人と勘違いされる方もいますが(映画監督という言葉があるからでしょう)、担っている役割は全く異なります。劇場に入れば舞台監督が全ての指揮系統の頂点に立ちます。演出家さえその下です。どちらかと言えば「現場監督」という言葉をイメージしてもらうとわかりやすいのではないでしょうか。

普段の活動で使用する荷物が収納された大きな棚を移動。
舞台と客席になるフロアを確保します。

移動した棚はそのまま楽屋と舞台袖の境になります。

移動のために下した荷物を再び棚に収納します。

フロアが広くなったところで作業開始。
今回の装置で使用するパネルの組み立てです。
基本枠は前々回「Mission」の時の物を使用しています。

今回はただの壁ではなく、このパネルに釣りものをします。
テンションがかかって歪まないように補強を入れていきます。

組み立てたパネルを立てます。
重りは普段売り物にしているペットボトルドリンクです。

建込みが終わってから壁の装飾です。
新聞紙の台紙に段ボールをちぎったものを鱗のように貼っていきます。

とにかく予想以上に手間と資材が必要な作業でした。
段ボールの入手に近所のスーパー、コンビニエンスストアを何件もまわりました。

壁紙の装飾がある程度進んだところで釣りものの幕を用意します。
芝居屋‐万‐の松本氏が見つけてきた面白素材・パオパオ。

カラーセロファンで蛍光灯がブラックライト風に早変わり。
「宴もたけなわ」でも使用した照明効果です。

パオパオが仕掛けによって天井になります。
これで装置全体の骨組みのような段階は終了。

壁に汚しを入れていきます。
汚い最下層、腐った世界をイメージしてカビや湿気を演出。

カビがにじんでいるような雰囲気を出すために、ある液体を使用。
汚しを入れた壁とこれからの壁の質感の違いをご覧あれ!

完成形が近付くと補修や調整を施していきます。
幕の稼働ギミックもテストをしながら改善します。

ちなみに、パオパオが天井に接近することから、ライトをLEDに変更しています。
パオパオに反射した光が神秘的でもありました。
今回の仕込みは20日(水)昼ごろからスタートし、21日(木)の夕方までかかっています。初日はリハーサルを行う時間もなく、暗転の確認だけしかできませんでした。つまり、ぶっつけ本番に近い状態です。そこでうまくいかなかった点はその夜から翌日の日中に修正します。そして2日目は昼に1本リハーサルを行うことが出来ました。
装置に関しては芝居屋‐万‐さんの力を借りて大成功でした。正直なところこれまでの実績が不明な方々にお任せするのには不安がありました。こちらのイメージをどの程度把握して、どの程度の仕事をしてくれるのかがわからなかったからです。しかし、松本氏の好奇心と言いますか、とにかく楽しんで芝居作りに関わっている姿勢に、大きな可能性と、今後双方にとって良好な関係が築けそうな予感がしました。馬が合うというやつです。そこで、今回は自由な発想と実験的取り組みを全面的に許可(依頼)しています。丸投げではなく共に創っていく感覚を大事にしたかったことも、その背景にあります。ひとりの手柄では成り立たないのが舞台の魅力、奥深さなのです。