その言葉に奮う心が、三叉の戟を振るうための真実。

Posted by theatreminori on 18.2012 主宰者コラム 0 comments
どうも。お気に入りの居酒屋の店長さんが再び異動してしまい、どこまで追いかけていこうか迷っているSugiです。

今さらながら、てあとるみのり第7回公演「ミンナ_シッテル」へのご来場、ご支援、ありがとうございました。おかげさまで無事に公演を終了することができました。毎度のことですが、早くも次回作のタイトルと公演時期を発表してしまいましたので、そちらもどうぞよろしくお願い致します。

さてさて、そんな「ミンナ_シッテル」ですが、ブログでは様々な偽あらすじが公開されてきましたね。もはやネタバレ防止の必要がなくなりましたので、ここで正しいあらすじをお届けすることにしましょう。

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「近日発売の最新次世代スマートフォンを先行プレゼント」
そんな企画に応募し、書類審査を勝ち残った者たちが集められます。最終選抜方法は、応募者同士の協議による当選者1名の選抜でした。本名も出身地もわからない者同士が、スマートフォンを何故欲しいのか、何に使うのかといった純粋な動機を頼りに協議し始めます。
ネットの世界に人の温かさを求める少女、ネットの情報こそ世の中の真実であると啓蒙する青年、スマートフォンを介した仮想現実の交流を現実の交流と重ね合わせる少女、最新の機種を自慢したいおばさん、昆虫の研究に勤しむ男性など、それぞれの動機はバラバラ。やがて、一人の青年が語り始めた言葉に一同は驚愕します。
「自分は応募者ではありません。当選者を決めるために派遣された審査員です」
彼が語る根拠は、理路整然としており、真実味がありました。ネットから得たという他者の「真実」が、単なる虚像であったことが明らかにされていきます。そう、目の前のこの現実こそが「真実」であると言わんばかりに。
同時に彼は、機械を介して感じる人の温かさを「思い込み」であると論破します。その言葉の裏側には、人間が人間と触れ合う中、夢を追いかける志の中にこそ、人とつながる本来の意味、支え合うことができる可能性があるのだという、温かさがあるようでした。
こうして、応募者は次々と心を改め、部屋を出ていきます。最後に残った審査員の青年。実は、彼も単なる応募者でした。彼のこれまでの宣言も論説も、全ては偽りのものだったのです。結果的に部屋に残った彼に、次世代スマートフォンが贈呈されます。彼が繰り広げた相手の心の拠り所、その弱みに付け込むような騙しの手口に、憤りを隠せない担当者が詰め寄ります。
「何があなたをそこまでさせるのですか!正気とは思えない!」
「そうですね…。とてもまともじゃありませんね…」
自嘲的な笑みを浮かべた青年の手はぶるぶると震え、やがて呼吸困難をきたすような発作に見舞われます。彼はのたうちまわりながら、その答えを語ります。常に最新の端末を保持していないと、不安で押しつぶされそうなのだと。
なんとか呼吸を落ち着かせ、部屋を去った青年。しかし、不安は常に彼の心を襲うことでしょう。他社はすぐに最新の次世代端末を追随する機種を発表するはずです。そして、たった今「最新」である機種を提供した会社でさえも、来月からは新機種の開発を始めるというのです。
物語は悲壮感を持ったまま幕を下ろしつつありました。その刹那、あの青年が振りかざした「目の前にある真実」さえも、真実ではなかったことが明らかになるのでした…。

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当然ながら、この展開の背景には様々な人間模様が織り込まれています。あらすじだけでは100分以上に及ぶ舞台の面白さは完全に伝えきれませんので、実際にご覧いただけなかった方には物足りないことでしょう。しかし、ご安心ください。次回作にて、今作以上の面白さをお届けいたしますので!

…有言実行です。はい。

ちなみに、「ミンナ_シッテル」のアイディアの発端は、スマートフォンそのものではなく「振り込め詐欺」でした。錯覚、思い込みとは、当事者にとっては紛れもない真実であり、それゆえに周囲からは冷静ではないと思われるような行動につながってしまう。それは決して個人の不注意ではない、誰もが目にしていないことを自分の立場に置き換えて一喜一憂している現代社会の「常識」であると感じたことが発想の根源です。「人類は実際に目にしたことのないものを真実だと信じるようになってしまった。光の速度も、地球の青さも、地球の裏側の天気も、それが真実だと思い込むようになってしまった」という終盤のセリフに、この物語の一つの真実が隠されていると言えます。チラシに採用された錯視図、ブログに公開された偽情報、舞台のキャッチフレーズ、物語開幕時のバーチャルライドアトラクションシーンも、このコンセプトに基づいていました。

4月には脚本データをweb公開する予定ですので、こういった物語の背景を意識しながらお目通しいただけると、より一層お楽しみいただけるはずです。

では、有言実行のために、再び茨の道を歩んでいきます。よろしくどうぞ。

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