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3月26日のてあとるみのりです。

Posted by theatreminori on 26.2020 稽古レポート
3月最後の活動日です。先週は事業所のスケジュールの都合で活動がなかったので、2週間ぶりの活動です。そして、年度でカウントすると2019年度最後の活動日でもありました。

午前中の制作部では3月5日(木)の活動で宿題になっていた新しいグッズのアイディアを出し合う話し合いを行いました。それぞれが複数考えてきた案を付箋紙に書き出し、ジャンルごとに分類して検証していく方式を使いました。案としては面白いものも深く検証するとクリアしなければいけない課題が見えてきたり、同じ素材から似た発想が浮かぶ人がいたりと、議論の題材には事欠かない協議になりました。2時間の話し合いはあっという間に時間となり、統廃合されたアイディアを、次回までにもう少し深く考え、実現可能なのか?実現に必要なスキルや費用はあるのか?といった内容を整理してくることになりました。これまでのパターンを大きく覆す案が実現するかもしれません!

午後は即興芝居を行いました。人物設定と話の大まかな展開を決めての即興ですので、大幅な脱線もなくまとまった物語に仕上がっていました。それでも一度演じ終えると「あの話題に特化し過ぎたね」「すぐに結論を出さない方がよかった」「あそこで拾ってくれたのはさすがだった」などの振り返りが自然発生し、それを踏まえて何度かセッションを行うことができました。



最後には一度決めた人物の組み合わせをアレンジして、より即興性の高い条件の中で演じ合いました。誰が主導権をとるかで話の展開ががらりと変わってくるので、見ている側は実に面白く、演じている側はとても難しい即興になりました。一度強く出て主導権を取ろうとした役者が、相手の切り返しにあえなく力関係を逆転されてしまうシーンもあり、周囲は笑いに包まれました。

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ちなみに、即興のメインテーマはこの季節に相応しく「卒業式」でした。卒業生とそれを取り巻く人々の様々な交流が自然発生していました。団員の中には通っている大学を今月でまさに卒業する団員もいます。しかし、残念ながら新型コロナウィルス感染防止対策の影響を受けて卒業式が中止になってしまったそうです。そんな団員に少しでも卒業式を体験してもらおうという計らいでした。もちろん、現実的な卒業式とは少々異なるフィクションの世界ではありました。突然卒業生の親が娘に「トイレ大丈夫?」と心配しながら教室に姿を見せるといった奇想天外な展開も発生し、とても明るくにぎやかな「卒業式」になりました。

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東京都が公式に週末の外出自粛を要請するようなタイミングでの活動ということで、本来社会人参加者のために予定されていた夕方から夜の活動は中止させていただきました。急な予定変更で関係者には大きなご迷惑をおかけしております。次週の活動も制作部、午後の稽古ともに1時間短縮して開催する予定になっています。この情報も、月末の東京都や世界レベルでの状況によって変化すると思われます。明日の予定さえお約束できない日々が続くことになりそうですが、Webでは最新情報を発信してまいりますので、ぜひご参照ください。

<活動情報関連リンク>
ハートランドみのり月間活動予定表
総監督Twitter

3月12日のてあとるみのりです。

Posted by theatreminori on 12.2020 稽古レポート
てあとるみのりでは、公演が終わった後のインターバルには必ず稽古場の床磨きを行います。普段稽古で使用しているハートランドみのりの床すべてを、日頃の感謝と次回もお世話になるという思いを込めて、劇団員で丁寧に掃除するのです。3月12日(木)はの午前中は、そんな活動を行いました。



置かれている荷物も移動させての大仕事ではありますが、もう何度も行っている恒例行事なので参加した団員は要領よく作業し、予定していた時間よりもかなり早く進行させることができました。時間と余力があれば…と想定していた白い畳マットの掃除まで実施できました(この設備はてあとるみのりではほとんど使っていないのですが)。参加した団員はやり遂げた充実感に満たされていました。

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奇麗になった室内で、午後は先日行われた第23回公演「UNKNOWN」の公演動画を鑑賞しました。「UNKNOWN」の稽古の動画は何度も見ている劇団員ですが、公演の様子を客観的に見るのは初めてのことです。お客様の反応を含めて、自分がどう見えていたのか、イメージ通りにできていたのかなど、自分なりの答え合わせができる貴重な時間です。団員たちは期待と緊張を胸に、スクリーンに映される公演の様子を見つめていました。

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鑑賞終了後、各自が感じた思いを発表し合いました。作品としては見ごたえもあって面白かったというのが概ねの感想でしたが、個人の出来栄えに関しては、全員が「まだまだだ」「動きがぎこちない」「動けていたと思っていたらそうでもなかった」「感情の動きが見えてこない」「セリフはどうにか出たけれど下手だった」「早口で一気に言ってしまうところがもったいない」「一から鍛え直さないとヤバい」といった、厳しい評価でした。もちろん、稽古の時から演出に言われていたことも多々あります。それでも自分では改善した、対策したと思い込んでいたのでしょう。改めて自分自身の目で、客席からの視点で見つめ直したことで、そんな過信はもろくも崩れ去ったのです。大切なのはその反省を次にどう生かすかです。ただその場で感傷的になってやる気になったようなことを口にしても、実際に次の稽古で生かされていなければ同じことです。役者としてのベースラインをどこまで上げられるか?このインターバル時期が勝負です。

また、萬劇場夏の短編集に関する最新情報の共有も行われました。まだまだ脚本も参加者も確定していませんが、色々なことが運営サイドとの調整の下で決まってきています。現状ではイベントの実施がどうなるのか不透明ではありますが、しっかりと全体でモチベーションを維持して創り上げていきたいところです。

次週の活動は事業所の都合でお休みです。次のブログ更新も26日(木)の活動後になりそうです。それまで皆さんお元気で!

3月5日のてあとるみのりです。

Posted by theatreminori on 05.2020 稽古レポート
第23回公演「UNKNOWN」も無事に終了し、3月5日(木)は久し振りの通常活動日でした。

午前中の制作部では、グッズの開発・販売に関する振り返りを中心に、公演の裏方業務に関する反省会を実施しました。グッズについては何か新しいアイディアが必要だという共通認識に至り、26日(木)の制作部までに各自が新しい案を5個以上考えてくるという宿題が出ました。次の公演まで時間があるので、有効にその時間を使おうということです。

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そんな話し合いの後には、制作部や稽古で使用している事業所内のドア、椅子、机などを消毒液で洗浄しました。もちろん新型コロナウィルス対策の一環です。少しでも安心して活動できるように、それぞれの手洗い、うがい、消毒などはもちろん、ハード面の消毒にも力を入れています。

午後は次年度の活動スケジュールの発表と説明に続いて、「UNKNOWN」の運営面、主にチケット販売に関する振り返りが行われました。そして、チケットを売るための努力をどの程度、効果的に行うことができていたかのチェックを行い、次回公演へ向けて意識しなければいけないことを整理しました。総監督からノルマ的に与えられた数字を「売らなければいけない」ではなく、自分が今回の舞台で「何人呼びたいか」「絶対〇〇人に見てもらうんだ」といった主体的な意欲を持つことの重要性が説かれました。その意欲がすべての行動や稽古への高い意識につながってくるということです。

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少しシビアな話し合いの後は、短いシナリオのセッションを行いました。役を入れ替えながら3回。みんな思い切りキャラクターを濃くして演じ「面白い」「深く考えずできる演劇っていいね」「これこそあるべき姿だ」と、笑顔で振り返っていました。次の公演へのインターバルにあたるこの時期、リラックスして演技の基本的な面白さに触れられています。公演用の脚本や役を手にしてからでも、こんな雰囲気で取り組めたらもっと面白くなりそうな気がします。

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さて、そんなこんなで、少し緩やかに進行している3月ですが、次週には「UNKNOWN」の公演動画を鑑賞しての演技振り返りを予定しています。自分の姿を客観的に見つめ直す楽しみのような不安のようなそんなひと時です。各自が言われなくても気が付くことがたくさんあることでしょう。どんな感想が聞かれるのか、今から楽しみです。

「UNKNOWN」はこうして生まれた!

Posted by theatreminori on 04.2020 主宰者コラム
てあとるみのり総監督の椙田です。皆様のご支援を賜りまして、無事に第23回公演「UNKNOWN」を終えることができました。わが国でも徐々に新型コロナウィルスに関連する具体的な行動要請が発信され始めた最中の公演にもかかわらず、多くのお客様にご来場いただけましたことは、まさに感謝の一言以外の何物でもありません。

さて、今回はそんな「UNKNOWN」という作品について振り返ってみます。「UNKNOWN」の未知の部分を公開してしまおうというわけです。演劇という芸術活動も活動自粛の波に飲み込まれつつある今、少しでも皆様の楽しみになれば幸いです。



「UNKNOWN」というテーマ

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そもそもこの作品のルーツは、2月上旬に開催される「#演劇的な一日 in 大塚2020」のための物語作りにありました。この地域演劇交流イベントでは、全団体が共通のテーマを自由に解釈した作品を自由な(演劇的な)表現技法を用いて発表するという取り決めがあり、今回のテーマが「みち」だったのです。漢字ではなく仮名で「みち」なのがポイントで、「道」「満ち」「三千」など、自由に解釈できる(むしろ幅広く解釈してほしい)という運営側のリクエストがありました。そこでストレートに「道」ではなく「未知」という意味を採用することにしました。これが2019年11月初旬のこと。イベント運営側に提出する資料に、タイトル「UNKNOWN」と、キャッチフレーズ「未知なる存在UNKNOWNを解放せよ」という言葉が先行して記載されました。キャッチフレーズに関しては制作の石塚が「なんか、かっこよくない?」という発想で提示してきたもの。当然、この時点で脚本や原作ができていたわけでもなく、全てはこのお題の設定からスタートしたのです。


最初に描いていたのはゲームの世界

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未知なる存在をどう描くか考えていく中、VRゲームの世界というひとつの着地点を見つけました。脳波に共鳴して、思いのままのヒーロー(中二病)体験ができる「チューニング」というゲームが開発され、そのテストプレイを主人公が行うという物語です。ゲームを進める中で、なぜか思い通りにいかない展開が訪れ、それが未知の存在の介入によるもので、そのUNKNOWNを倒すために戦ううちに、隠された真実に気付くという…ハリウッド映画っぽい展開です。中二病の資質が高い人ほど優れた「チューニング」プレイヤーになれるという、ユニークな設定が与えられていました。しかし、この妄想力とUNKNOWNとの関わりにいまひとつ結びつきの強さを感じることができず、路線を変更。ゲームという要素を排して、アプリとのVR交流ができるという方向に物語を整理していきました。こうして「UNKNOWN」は形を整えていったのです。


未知なるものとして感情を設定

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表面的な未知なるものはすぐに思い付きました。見たことない景色、行ったことない場所、初めて会う相手などがそれで、我々がそこに生じる不安を解消または軽減するために事前にインターネットから様々な情報を得ている文化が根付いていることもすぐに思い付きました。しかし、それをそのままテーマにしては深みがないので、そういった行為の動機になっている「不安」というネガティブな要素に着目しました。そこから人間の感情とは何なのか、という分析が始まり、カルフォルニア大学のAlan S.Cowen氏が2017年9月に公表した論文にたどり着きました(参考資料リンク)。人間の基本感情が27種類。それらのブレンドで2,185の感情表現に分類できるのだという研究論文です。言うまでもなく登場人物「謎の少女」のナンバリング「2185」はここから採っています(論文では単純な不安が2,185番目の感情ではありませんでしたが)。こうなってくると、この2185という数字を生かす方法で発想が進みます。アプリそのものというよりもそれを動かしている人工知能(AI)に目を向けようと考え、人間らしいAIとは人間の全ての感情を適切に表現できるAIなのだろうという理屈から、2,185種類の感情AIの集合体「リエゾン」が誕生したのです。


「リエゾン」のネーミングの意味

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リエゾンという言葉はフランス語で「連絡」「連携」「つなぐもの」「結びつき」といった意味を持つ言葉です。この言葉だけでも、劇中で描かれていた、ユーザー(マスター)に寄り添った案内人のような存在にピッタリです。もちろん、その線で名前の候補を探していましたので、この時点では「リエゾン」以外の言葉も候補に挙がっていました。
しかし、決め手になったのは「リエゾン」が持つもうひとつの意味で、フランス語の発音で度々登場してくる、文字の並びによって二つの音がひとつになってしまう、普段は読まれない文字が発音されるなどの音便のような現象のことです。姿を変えて認識させてしまう、統合させてしまうといったニュアンスを感じたため、この物語のメインAIのイメージにピッタリでした。そんな意味を知らずとも、「リエゾン」という言葉の響きに、AIっぽさと、不思議な親しみを覚えてしまった人も多いのではないでしょうか。言葉の響きとは面白いものですね。


BVRの研究施設はつくば市?

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並木研究主任がBVRシステムとリエゾンを開発した研究所はつくば市にある…という明確な設定はないのですが、実は、登場してくる人間の名前はつくば市に存在する地名から採っています。並木、谷田部、吾妻…。地図を見ながら、音としての響き、つくば市の中心部からの距離などを吟味して設定しました。劇中「人里離れているからね」というセリフが登場するのは、つくば市ありきの話ではなく、秘密基地のような研究施設なので都心にはないという設定からです。


セブンとメビウスのルーツはタバコ?

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アップデートファイルレベル7、通称「セブン」は物語後半で人間によるAIやシステムの統制の象徴として登場してきます。猛威を振るったセブンも、何者かによって仕込まれていた上位プログラムによって駆逐されてしまいます。それがメビウスでした。セブンの上位なのでナンバリングするのであれば「エイト」になりますが、劇中では明確にそう名乗らせず最後まで「メビウス」で通しています。これはメビウスリングが「8」と同じ造形であることと、「セブンのアップデート版がメビウスである」という昔からの愛煙家にはわかるであろう洒落からです(参考校資料リンク)。セブンの衣装に金色を入れたのは、古い「セブン」タバコのパッケージのイメージです(もちろん鎧のようなイメージもありました)。そして奇しくもメビウスを演じた石塚が好んでいたタバコが「メビウス」でした。
実際にはこれだけがネーミングのルーツではなく、BVRに依存した人間にとっての楽園構想を主張するロジックの持ち主である「セブン」は「第7天国(セブンスヘブン)」の思想にも関連しています。また、そんなセブンがエイトに駆逐される様は、WindowsのOSが7から8で全くの別次元に変化したこともイメージされています。


AI達は個性重視にアレンジ

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劇中に登場してきた様々なAI(アプリ)は、一般的なイメージにこだわることなく、演者の個性を第一に考えて大胆なアレンジを施した。フォトショップと思われる「写真屋」が和風だったり、「Yマップ」が妙にワイルドかつ自由(あまり優秀そうでない雰囲気)だったり…。その他のアプリAIたちもかなり個性的にしました。そのため一度完成した脚本を配役が決まった時点で書き直しています。役者の個性を輝かせることで、お客様に理屈ではない表現として違和感を与えずに成立させることができました。


あのシーンはバルス?MGS?

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リエゾンと謎の少女(2185)が手を取り合ってアンノウンを解放する名場面。お客様から「バルス」だとのご感想を何件かちょうだいしました。このシーンに関してはそれを意図した演出はつけておらず、演じている本人たちが「プリキュアだ!」と盛り上がって構築された所作でした。脚本としてはガンダムのアムロとララァのシーンをイメージしたのですが、まあ、そのあたりは世代の違いですね。

ラストシーンの吾妻の電話は、「メタルギアソリッド」のラストの真似(形式的な)です。正直なところ、あのシーンは蛇足かな…と最後まで迷っていました。真の平等とは真の競争の幕開けで、それまで強引に去勢していたマイノリティが解き放たれ、いつかマジョリティが追い抜かれる恐怖がある…というひとつ前のシーンまででも十分だった気もします。しかし、それを企図している大国がおいしいところを持って行こうとしている様(結局は支配や統制に世を正したいという人間の愚かさ)を、ひとつの問題提起として印象付けるために導入しました。もともとメビウスという存在は吾妻によって仕込まれていたアンノウンプログラムであるという裏設定があったので、その裏付けも果たしたかったという狙いがありました。AIという夢の技術をめぐって、すでに列強各国は覇権争いを繰り広げているのでしょう。今も続く宇宙開発のように。それこそ我々が恐れるべきUNKNOWNなのでしょう。それを描けたことでは、付け加えて成功だった気がします。



さて、そんなこんなでお届けいたしました、「UNKNOWN」誕生秘話。皆様が受け取った印象のルーツが意外なところにあったかもしれません。しかし、それが正しい、間違っているという比較をする必要はありません。すべての方にそれぞれの物語のテーマが浸透してこそ、制作者冥利に尽きるというものです。ぜひ皆様が感じたテーマや印象に残るシーン、人物などをお聞かせいただけると嬉しいです。それでは、また劇場で。

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