どうも。光陰矢のごとしという言葉を、肌で感じてやまない焦心かつ傷心的な年度末を過ごしているSugiです。てあとるみのり第10回公演「そこにあるもの」の報告も第3弾。一応これで節目にするつもりです。そんな今回も舞台裏と言いますか、上演時間以外の様子を中心にお届けします。お楽しみください!

パオパオの巻き上げ動作の確認中です。

これは暗転中に役者数名がワイヤーを巻き上げていました。
何度も練習と装置の調整を行って、最終日はかなりスムーズに。

空き時間に自主練習を行うヤマト王子。
苦手なセリフ、早口言葉、外郎売など、どの役者も熱心でした。
その成果もあって、日に日に演技の質が高まっていました。

休憩時間の楽屋風景。
先ほどまでのステージの失敗談で盛り上がりつつ、しっかり脚本も確認。

公演後にお茶とお菓子で休憩。
ヨロイ大尉の髪が…!

公演中は受付でグッズの販売を行いました。
特別限定パンフレットはおかげさまで完売しました!
特別限定なので再版の予定はありません。

公演の合間には音響、照明も質を高めます。
音響は3日目まで曲の長さをアレンジ、新たなSE創りをしていました。
照明は何パターンか組み合わせを試しています。
役者だけではなく、効果も進化していたのです。
そんなこんなで、当初はチケット売れ行きが不振で、収入面で心配された「そこにあるもの」も、終了してみれば収支予想を覆す大幅な黒字を計上することとなりました。ご来場いただいた皆様、会場でグッズをご購入くださった皆様には感謝です!
ちなみに、劇中に登場してくる人物(ゴキブリたち)の名は、ゴキブリの名前から取っています。さらに、ペリプラネタ、バローイングという家名も、該当するゴキブリの学名から拝借しています。相当な昆虫マニアでしたら、あらすじを見ただけですぐにこの話がゴキブリの話であることに気が付いたことでしょう。思った以上にゴキブリはペット、観賞用としても世界中で愛されているようです。特にヨロイモグラゴキブリ(ヨロイ大尉の由来)はかなりの人気者です。今回の芝居でも大尉は断トツの人気でした。この人気のリンクは脚本制作段階から密かにこだわっていた部分で、まさに狙い通りの結果でした。
ゴキブリについて私が参照し、大変役立った研究者による「ゴキブログ」をご覧になりたい方は、勇気を持ってこちらからどうぞ→
ゴキブログ……ヤマト、サツマ、ヨロイらのゴキブリとしての真の姿を閲覧できるはずです。
今回の舞台は、厳しいスケジュール進行の中での成長、装置と照明と衣装のコーディネート、さらには物語から引き起こされるであろう現象の予見に至るまで、全てが美しくかみ合った、プロデューサー冥利に尽きる作品でした。それ故か、かかわる団員たちの士気、モチベーションのベクトルを含めた総合的なまとまりが生まれていたように感じます。演技の完成度としては未成熟な部分が多く、お客様には物足りなさ、難解さを残したかもしれませんが、団体としてのまとまり、一体感、連動性は、誰もが超えたかった「Mission」を上回っていたと言えるでしょう。
そんなてあとるみのりが、さらに飛躍するため。あの頃の自分たちと真剣に向き合うための第11回公演は、2013年10月です。まだまだ先…と油断していると、すぐにあと1ヵ月!ということになりかねません。まさに光陰矢のごとし。明日なんて、いつまで来てくれるかわからない…。次回はそんなお話です。
さて、公演報告第2弾は、舞台裏を中心にお届けします。
まず今回お届けするのは、普段のハートランドみのりを劇場仕様にするまで、つまり「仕込み」の様子です。人数が多ければ早いというわけではなく、迅速かつ的確な仕切りが必要です。このあたりが舞台監督の仕事です。よく舞台監督という言葉を演出のような立場の人と勘違いされる方もいますが(映画監督という言葉があるからでしょう)、担っている役割は全く異なります。劇場に入れば舞台監督が全ての指揮系統の頂点に立ちます。演出家さえその下です。どちらかと言えば「現場監督」という言葉をイメージしてもらうとわかりやすいのではないでしょうか。

普段の活動で使用する荷物が収納された大きな棚を移動。
舞台と客席になるフロアを確保します。

移動した棚はそのまま楽屋と舞台袖の境になります。

移動のために下した荷物を再び棚に収納します。

フロアが広くなったところで作業開始。
今回の装置で使用するパネルの組み立てです。
基本枠は前々回「Mission」の時の物を使用しています。

今回はただの壁ではなく、このパネルに釣りものをします。
テンションがかかって歪まないように補強を入れていきます。

組み立てたパネルを立てます。
重りは普段売り物にしているペットボトルドリンクです。

建込みが終わってから壁の装飾です。
新聞紙の台紙に段ボールをちぎったものを鱗のように貼っていきます。

とにかく予想以上に手間と資材が必要な作業でした。
段ボールの入手に近所のスーパー、コンビニエンスストアを何件もまわりました。

壁紙の装飾がある程度進んだところで釣りものの幕を用意します。
芝居屋‐万‐の松本氏が見つけてきた面白素材・パオパオ。

カラーセロファンで蛍光灯がブラックライト風に早変わり。
「宴もたけなわ」でも使用した照明効果です。

パオパオが仕掛けによって天井になります。
これで装置全体の骨組みのような段階は終了。

壁に汚しを入れていきます。
汚い最下層、腐った世界をイメージしてカビや湿気を演出。

カビがにじんでいるような雰囲気を出すために、ある液体を使用。
汚しを入れた壁とこれからの壁の質感の違いをご覧あれ!

完成形が近付くと補修や調整を施していきます。
幕の稼働ギミックもテストをしながら改善します。

ちなみに、パオパオが天井に接近することから、ライトをLEDに変更しています。
パオパオに反射した光が神秘的でもありました。
今回の仕込みは20日(水)昼ごろからスタートし、21日(木)の夕方までかかっています。初日はリハーサルを行う時間もなく、暗転の確認だけしかできませんでした。つまり、ぶっつけ本番に近い状態です。そこでうまくいかなかった点はその夜から翌日の日中に修正します。そして2日目は昼に1本リハーサルを行うことが出来ました。
装置に関しては芝居屋‐万‐さんの力を借りて大成功でした。正直なところこれまでの実績が不明な方々にお任せするのには不安がありました。こちらのイメージをどの程度把握して、どの程度の仕事をしてくれるのかがわからなかったからです。しかし、松本氏の好奇心と言いますか、とにかく楽しんで芝居作りに関わっている姿勢に、大きな可能性と、今後双方にとって良好な関係が築けそうな予感がしました。馬が合うというやつです。そこで、今回は自由な発想と実験的取り組みを全面的に許可(依頼)しています。丸投げではなく共に創っていく感覚を大事にしたかったことも、その背景にあります。ひとりの手柄では成り立たないのが舞台の魅力、奥深さなのです。
どうも。わずか1カ月の全4回の稽古でこれだけの舞台を仕上げることができたことは、役者の影の努力、舞台装置担当者の底力、衣装担当の必死の努力、制作の迅速な動きなど、様々な要因が重なっての成果であり、これこそが舞台であると実感できた主宰者です。
公演期間中は多くのお客様にご来場いただきました。年度末のお忙しい時季に、誠にありがとうございました。おかげさまで全6ステージ、大きなトラブルもなく終了することが出来ました(小さなトラブルは毎回ありました!)。重ね重ね皆様のご支援に御礼申し上げます。
さて、そんなわけで、「そこにあるもの」の公演の様子をドドーンとお届けします。

基本の舞台装置はこんな感じ。狭くて汚い空間をイメージ。

開演から最初の場面はこんな感じ。
場面転換によって、この幕がそのまま天井になるのです。

ペリプラネタ家のヤマト王子は勉強の時間に居眠りばかり。

世話係のサツマから補習を受けるヤマト。
この世界は階層というルールによって成り立っている。

平和な世界に安心していたら、いきなり革命が勃発!

革命の知らせを届けたヤエヤマ先生もパニック状態。

革命軍の指揮を執っていたのはバローイング家の末裔、ヨロイ大尉。
従順なヒメマル軍曹とともに勝利に酔う。

ここは階層の底辺、第13階層。
働けない者たちが施しを受けて生きている世界。

配給の受け渡しを行うチャバとクロ。
その様子を見ているホタル。

ホタルはかつては上の階層にいたらしいが、
殺虫剤の影響で奇行が目立つようになってしまった。

ヤマトは13階層に逃げのび、そこの住民と出会う。
そこには同じように9階層から転落してきたワモンもいた。

城にいたころとは食べ物も、暮らしぶりも変わってしまったヤマト。
しかし、勉強しなくていい世界に喜びを感じる。

のんきなことばかり口にするヤマトに対して、
苦しくても這い上がりたいワモンが思いをぶつける。

そんな修羅場にヨロイが現れる。
ヤマト王子を亡き者にしようとするが、
ワモンはここにはそんな奴はいないと主張。

ワモンの主張に理解を示したヨロイに進言するヒメマル軍曹。
ヨロイはあえて「我が失態を望み、踏み台にしろ」と突き放す。

種の進化のために全ての階層を解体することを唱えるヨロイ。
13階層でしか生きられない仲間を見捨てるなと対抗するチャバ。

サツマは階層という社会の秩序があるからこそ、
我々は文化的な進化を遂げてきたのだとヨロイに反論。

クロはこの世界は蜃気楼、だから自分はここでは生きていないことを悟り、
「命が保証された状態では、生きていることを感じられない」と語る。

ヨロイの生きざまに魅かれたワモンはいつかたどり着きたいと直訴。
敗北から学び強くなり、いつしか自分を超えろと答えるヨロイ。
その真意はより優秀な遺伝子を後世に残し、種の進化を紡ぐためだった。

それでも誰かのために何かできることをしたいと決意するヤマト。
それは偽善であり、自他共の生きる力を損なっていると釘をさすワモン。
主張は異なれど、誰もがここで命を燃やしていることに変わりはなかった。

それぞれが自分なりに命を燃やすため、生きていることを実感するため、
「ガッテンだ!」の号令が最下層に響き渡るのだった。

カーテンコール。
結局、登場してくる人物はすべてゴキブリ。
彼らから見れば人間は社会の仕組みの中で生かされているだけ。
ただ負けることを恐れて、ひっそりと、寄り添って…。
今回の物語は、昨今の生活保護不正受給、年金をはじめとした社会保障制度の行く末の不安、尖閣諸島・竹島などの領土問題、北朝鮮の動向…という要素を、当初から描きだしたかった「境界線」「社会階層」というテーマに当てはめて構築されています。そこに不安を感じたり、エゴを通そうとする人間(そこに影響を受ける立場の集団)の本質とは何なのかを、かねてから疑問に感じていた「人はなぜゴキブリを怖がるのか(特に日本人)」という部分に結び付けた視点で、ひとつの仮説を導き出しています。
様々な階層・立場が存在する社会の中で、私たちは自分の居場所を求めている。あるいは、そこを居場所だと信じて、ある意味、自分に都合のいい生き方をしているのではないでしょうか。それは、過ちを犯すこと、負けること、失うことを恐れた生き方…。いろいろな物を守らなければいけない現代人ではありますが、こんな生き方は社会の枠の中だからこそ許され、求められる生き方で、本当の生きる力・生存に必要な本能は「文明」というシステムの中で去勢されてしまっているように感じます。闘わずに守る、逃げる。誰かが手を差し伸べてくれる。そうやって生きながらえる。こんな生き方を続けていては、生物(遺伝子)としての進化は望めないのではないでしょうか。
社会という枠組みを、後付けであてがわれた一種のスケールと考え、それを撤廃した視点で生命体としての進化とは何なのかを見つめた作品。その答え(投げかけ)が「そこにあるもの」なのです。
ゴキブリの視点から描いてみたのは、より人間の所業を客観視できるように。そして、お客様の心により強いメッセージと説得力を残せるようにと考えてのことです。もちろん、なぜゴキブリを怖がるのかという疑問に対する答えを出したかったからでもあります。
こういった物語の裏側については、当日パンフレット、特別限定パンフレットにも語られていません。ネタバレしてしまうからです。公演を終え、やっと、この場を借りて皆様にお届けすることができました。
創る者はもちろん、見る者の人生さえ変える作品。
その領域に、また一歩近付けたような気がします。
てあとるみのり第11回公演「チイサナソラ」北池袋 新生館シアターにて
2013年10月公演予定!
ついに自主開催としては初の外部劇場での公演に挑戦!
てあとるみのりの新たな舞台の幕開けを告げる物語の再演!
全ては、これまでのてあとるみのりを超えるため。
そして、昨日の自分を超えるため。
詳細は改めてリリースします。お楽しみに!
てあとるみのり第10回公演「そこにあるもの」
順調に公演進行中です!
チケット販売中(全席自由:1名様700円)→
チケット申し込みフォーム21日(木)18:30開場 19:00開演 残14
22日(金)18:30開場 19:00開演 残6
23日(土)13:30開場 14:00開演 売り切れ
23日(土)18:30開場 19:00開演 残13
24日(日)12:30開場 13:00開演 売り切れ
24日(日)16:30開場 17:00開演 残7残券情報は3月24日15時現在のものです。
※郵送でのチケット受け渡しは終了させていただきました。
※銀行振り込みによる事前お支払対応は終了いたしました。
さて、本日は2日目のリハーサルと公演の様子をお届けします。
公演期間中のため、見た目の画像はかなり小さくなっています。拡大してご覧になりたい方は、小さな画像をクリックしてください。これこそ本当のネタバレ防止機能です。今回は舞台装置も高評価をいただいておりますよ!













現在、全6ステージのうち半分の3回が終了したところです。役者たちは思い思いの時間を過ごしています。ここから一気に千秋楽に向かっていきます。まだチケットは残っていますので、ぜひおいでください!