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脚本家です。

Posted by theatreminori on 06.2011 主宰者コラム
脚本というものは、公演の半年前ぐらいに完成させます。

世の中には、ほとんど完成していない脚本を稽古の中で熟成し、完成させていくという手法を採っている同業者もいるでしょうが、私は「完成形」を役者やスタッフに手渡し、それぞれが時間をかけて自分なりに脚本を熟成させてもらうようにしています。

脚本家の仕事は稽古に入る前に終わらせる。
これは理想であり、当然のことであると考えています。
つまり、脚本を書く時点で、半年間で起こりうる様々な要素を想定し、それらが舞台の完成形に昇華されることを、文字通り「シナリオ」として織り込んでいきます。

この作業は苛烈を極めます。
登場人物の命を生み出すだけでも、己の魂、生命を削るのですが、さらに、劇団として、役者個々の挑戦と成長を物語になぞらえるとなると、まあ、はっきり言って、脚本を完成させたときには、かなりの生命力を失います。
考えてもみれば、独りで、架空の登場人物を含めた関わる人すべての生き様を司るわけですから、当然でしょう。

そんな過程で失われた私の生命力は、日々の稽古で補充されていきます。
それぞれの命と心の躍動が、生きている実感を喚起し、生みの親に還元されるのです。
そんな感覚を実感しながら臨む舞台であれば、観客として足を運んでくださる方々にも、何かの力を与えられる気がします。

そう信じて、今は稽古に励んでおります。

皆様、どうぞよろしくお願いいたします。


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